第30回写真コンテスト入賞作品と講評
金賞 希望の瞳
撮影者/ 和田 智子さん
今年新規参入したヤブイヌの「カツマル」。最も原始的なイヌと言われているそうですが、その野生を思わせる凜々しい立ち姿が確固たる表現力をもって再現されました。
頭から鼻先に当たる光が被写体の力強い表情を画面に浮かび上がらせています。これは顎から下を陰に落としたことで、一段と強調されました。目にはキャッチライトが入り、そのことで彼の心の中の強い意志が画面からにじみ出てくるようです。
作者はこの瞳をタイトルに取っていますが、その思いや狙いは見る者に十二分に伝わってきます。
銀賞 あ~ん♪
撮影者/ 古谷 眞力子さん
差し出された枝先のリンゴに大きな口を開けて食べようとするチンパンジー。リンゴの大きさを考えると、そんな大きな口でなくても、と思ってしまいます。とても愉快でほほ笑ましいシーン。作者の動物を慈しむ思いも垣間見えるようです。
半逆光の光線でエッジを輝かせ、被写体を浮かび上がらせているのもうまい。左のロープをつかんだ手を入れたのもいいですね。懸命さが伝わります。
銀賞 ハリケーン
撮影者/山﨑 愛子さん
「ウッヒャー、冷たーい」「気持ちいい-」そんな声が聞こえてきそうです。スコールを浴びるビントロングの母子。2頭の表情をよーく見てください。ホントにもう堪らないほど気持ち良さそうでしょう。この一瞬の表情を切り取った作者の腕前、お見事です。
スコールタイムでのひとコマですが、グルーミングしたことで水滴が弾けて〝大雨〟に見えるのも作品に動感が増して良かったと思います。
銅賞 おじゃまします
撮影者/中澤 都志子さん
アカアシガメの食事中、オニオオハシがやって来てちゃっかりご相伴にあずかろうという作戦。タイトルもぴったりはまっています。
種類が違う動物を一緒に写し込み、〝主役〟と〝脇役〟をしっかり見せた作品作りができて面白い。しかも主役はくちばし自慢のオニオオハシですから、カメの餌なら一口で食べられてしまうのでは、と心配してしまいます。
本当のところはそうではないそうですが、ストーリーを感じさせる楽しい作品です。
銅賞 うちの子といっしょ!?
撮影者/弘田 利文さん
何とまあ無邪気なアカハナグマの寝姿。思わず笑ってしまいました。やんちゃ坊主が遊び疲れてこんな所で寝入ってしまったのでしょうか。作者も我が子を思い浮かべ、ほくそ笑みながらシャッターを切ったことでしょう。
この状況では、いろんな撮り方が考えられるのですが、作者は奇をてらうことなく、感じるままにストレートに写し撮って見せました。そのことで却って、インパクトの強い作品になったように思います。
銅賞 「ハシビロコウって、でっかいなぁ」
撮影者/岡田 明花さん
作者は7歳だそうです。現在のカメラは老いも若きも誰もが撮影を楽しむことができます。これから飛び立とうとする場面でしょうか。その一瞬の動きを止めて撮り込みました。
何よりアングルの良さがハシビロコウを格好良く見せて成功しています。被写体をやや低い位置から撮ったことで、そのフォルムが際立ち滑空直前の動感が見事に切り取られています。シャッターも良いタイミングで、力強い作品になりました。
開園30周年記念特別賞 30周年おめでとう♡
撮影者/山﨑 洋子さん
フラミンゴ2頭が重なり合う時を逃さず、更には手前の大きい方が片足を折り曲げて互いが違う瞬間を捉えた狙いも巧みで、何よりもタイトルに嬉しいメッセージ『30周年おめでとう♡』に託していただけた作者の心にも触れ、今日まで30年もの長きに亘り心に掛けて育ててくださいました皆様の声かと、感慨ヒトシオ呼び起こしてくださいました。
第30回写真コンテスト概要
募集期間 | 令和3年5月1日(土)〜7月31日(土) |
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応募作品 の内訳 |
応募総数 228点 応募者数 94名 年齢層 4〜83歳 入選作品 61点 |
賞 | 金 賞 1作品 銀 賞 2作品 銅 賞 3作品 審査員特別賞 10作品 開園30周年記念特別賞 1作品 入 選 44作品 |
展示期間 | 令和3年9月5日(日)〜11月3日(水・祝) |
審査員 | (敬称略、順不同) 岩崎 勇:写真家 門田 和夫:元高知新聞社写真部長 塚本 愛子:高知県立のいち動物公園園長 |
全体講評
1991年の開園から30年を経たこのところ、「トリップアドバイザー」人気ランキングでは名だたる北海道旭山動物園や和歌山、沖縄などを抑え、昨年まで二年連続日本一のランク評価を得ていることも、皆様がもうご存じの筈ですよね。
ここ香南市三宝山のフトコロ大谷の最高の環境の中で澄んだ自然を満喫しながら育ち生活している動物たちへの賛辞の価値付けなのでしょうね。
30周年の今年は塚本女性園長さんが就任され、新しい何かが期待されます。
第1回からレギュラー審査員として、数多くのカメラ愛好家が動物好きとなって、パスポートを携え来園し、力作を毎回応募してくれる姿に触れました。休園や県外からの来園もままならないコロナ禍となった昨年からも、写真コンテストだけは無事続けることが出来ましたことにも感謝しています。
(審査員 岩崎 勇)
今回は節目の第30回展を迎え、応募総数228点、応募者数94名。コロナ禍の影響で昨年減少していた応募総数・応募者数ともに平年並みに戻り、活発な審査となりました。
動物公園はさまざまな動物と身近に出会うことのできる空間です。コンテストは、動物の何を撮るかということだと思います。そしてそれをどう表現するかということだと思います。
作品全体としては、一瞬見せる「表情」、かわいいあるいはとぼけた「仕草」、何かを思い見つめる「視線」、はたまた親子の「情愛」などなど。バリエーション豊かに動物たちの生きている姿が再現されており、とても見応えがありました。また撮影者の動物への愛着が感じられる作品もあって、審査は心が和むひとときでした。
一方で、良いシーンに出会っているのにしっかり撮りきれていないものや、背景がゴチャゴチャしていて折角の主役が引き立ってこない残念な作品も散見されました。この対応はアングルやポジションを変えてみるとか、背景をボカして目立たなくするなどの工夫も必要です。
優れた動物写真には動物の心の動きが写っている、といわれます。なかなか難しいことですが、上位入賞作品は動物たちの動きをしっかり観察し、豊かな表情の中にそれぞれの気持ちを併せて伝えることができているように思います。
(審査員 門田 和夫)