第31回写真コンテスト入賞作品と講評
金賞 秘密の部屋
撮影者/山﨑 愛子さん
過去数年の金賞受賞作品からすれば風変わりな作品で、戸惑う方もいるかもしれません。タイトルも少し難解。作者は、虚像が写っている青く澄んだ水中の世界を「部屋」に見立てました。
ペンギンはたくさんいるはずなのですが、ぽつんと一羽だけになる瞬間を待っていたのでしょうか。彼だけの秘密の世界。タイトルの意味に気づくと、見る側はその世界に引き込まれていきます。
当コンテスト以外でも十分通用する作品ではないでしょうか。動物園で撮った動物写真であっても、写真作品として昇華できうる可能性を示しています。
銀賞 孤高のハンター
撮影者/山中 正光さん
昨年12月に亡くなったウンピョウの「リュウ」。国内2番目の長寿を誇っていました。その姿に魅了されていた方も多かったのでは?
作者もきっとそうだったのでしょう。力強い前足と人懐こそうな瞳。人間も含めて、生き物の写真は瞳にピントを合わせる鉄則があります。この写真も然り。その姿をしっかりと撮ることは愛情表現のひとつです。
銀賞 おめかしバッチリ
撮影者/和田 智子さん
園内の花がカワウソのプールに流れてきた時の様子のようです。花が鼻とおでこにちょこんと乗ったとても愛らしい様子を捉えました。カワウソのキョトンと目を見開いた表情もいい。
表情のアップを撮りたくなるシーンですが、周りの状況を入れた構成が効いています。シャッターチャンスは突然訪れます。肩の力を抜いて柔軟に備えたいですね。
銅賞 空高く~
撮影者/鳥原 弘子さん
動かぬ鳥ハシビロコウは気まぐれで、突然飛ぶことがあるので用心しなければなりません。そのあたりをよく知っている(だろう)作者は沈着冷静に対応しました。ピッタリ決まった構図の素晴らしさ。
飛んだ時はこの構図で撮ろうと思い描いていたのでしょうか。動かない鳥さながら、作者も動かずにじーっと待っていたのかもしれません。
銅賞 みんな あつまれー
撮影者/宇賀 勇翔さん
なんと作者は2歳。素直に「かわいい!」と思ったものにカメラを向けたのでしょうね。それがストレートに伝わってきました。撮影の光景を想像すると微笑ましくなります。
中央に真っ白のモルモットを据えたのはたまたまでしょうか?いえいえ幼いながらセンスを感じます。左の子の見上げたような目の動きもユーモラスでした。
銅賞 も少し背がほしい!!
撮影者/吉村 純三さん
舌と首を精一杯伸ばし、おいしい葉っぱにもうちょっとで届く、という状況。思わず「キリンさんガンバレ~」と声援を送りたくなる写真ですね。
構図も光っています。キリンの垂直に背景の三角の屋根が効果的。計算したベストアングルです。
若い人にはピンとこないタイトルですが、私たちにはわかります。往年の漫才グループお馴染みの決め台詞です(笑)。
第31回写真コンテスト概要
募集期間 | 令和4年5月1日(日)〜7月31日(日) |
---|---|
応募作品の内訳 | 応募総数 246点 応募者数 100名 年齢層 2~90歳 入選作品 62点 |
賞 | 金 賞 1作品
銀 賞 2作品
銅 賞 3作品
審査員特別賞 10作品
入 選 46作品 |
展示期間 | 令和4年9月4日(日)〜11月3日(木・祝) |
審査員 | (敬称略、順不同)
岩崎 勇:写真家
反田 浩昭:高知新聞社元写真部長
塚本 愛子:高知県立のいち動物公園園長 |
全体講評
今年の「のいち動物公園写真コンテスト」は、皆様のご支援のお蔭をもちまして第31回を迎えることができました。
若くは2歳、ベテランは90歳!幅広い年齢層からのご応募、感謝いたします。特に今回は若年層からの応募が増えました。うれしい限りです。それゆえ多彩な作品が多く集まり、楽しい審査をさせていただきました。
ここ数年の間にカメラが進化したことにより、誰もが、感じたままに、自由に写真表現ができるようになりました。そして応募されるプリントの質も向上。このまま飾ることもできる完成度の高い作品が散見されました。
写真は、撮る前にじっくりと構想を練る時もあれば、偶然に撮れることだってあります。長い経験だったり、高価な機材があるに越したことはないのですが、それだけで良い写真が撮れるわけでもありません。スマホやコンパクトカメラでも撮れるのです。「撮りたい」「撮ろう」という気持ちがあればいいのです。自分なりの考え方や観察眼があれば、なおのこと良いでしょう。
お気に入りの動物の元へ何度も通ううちに、覚えられて親しくなることも。彼らと対話する中で、それぞれに思う事があることでしょう。今年の受賞作にあるような想像の世界に遊んでもいいのではないでしょうか。もちろん、可愛さやたくましさに目を向けるのもオッケーです。これからも楽しみながら写真を撮ってください。