園内で見られる昆虫たち

高知県立のいち動物公園におけるヒメボタルの生息調査について
作成日:2022年8月13日
高知県立のいち動物公園 野生生物調査・普及委員会

当園にヒメボタルが多数生息する理由等を明らかにするために当園の自然環境について調査し、ヒメボタルの成長記録を作成しましたので報告いたします。

【調査場所】
マンドリル獣舎前の植栽帯~2次区スカイライン沿い門扉を主とする2次区全般
【調査方法】
①    ヒメボタルの生息調査(発生時期、個体数、場所、行動範囲、記録)
②    陸生貝類生息調査(採取・同定、記録)
③    ヒメボタルの飼育(ヒメボタルの採取・飼育・成長記録)
【調査体制】
下記構成員の共同調査チームにより実施する。
構成員(担当分野)
・のいち動物公園 野生生物調査・普及委員会(調査結果集約・ヒメボタルの採取・飼育・成長記録)
・こうちフィールドミュージアム協会 熊沢秀雄氏(ヒメボタルの生息環境)
・高知大学理工学部生物科学科 伊藤颯真氏 (陸生貝類の生息環境)

ヒメボタルに関する調査結果

《地質》
 石灰岩地質(三宝山裾野に位置する)
《植生》
 ・ヒメボタルが多い場所には、小さな沢や茂みが点在する竹林と針葉樹林があり、一日中日陰である。
 ・石灰岩地質に特徴的なアラカシ・ナンテン・ビワなどが自生するが、アラカシに関してはヒメボタルの繁殖場所にも生育し、ミミズも多種発見した。
 ※ヒメボタルは貝類がいない場合、ミミズ類や昆虫の死骸を捕食している。また陸生貝類もミミズを捕食する。また、陸生貝類を飼育してみて判明したが、割れたドングリには、陸生貝類も群がることからヒメボタルを取り巻く環境の繋がりが見えた。
 ・ヒメボタル飛翔期とキノコ類発生期がほぼ同時期である。
《生息野生生物》
 昆虫:資料1参照 こうちフィールドミュージアム協会 熊沢秀雄氏   
 陸産貝類:資料2参照 調査及び同定者 高知大学理工学部生物科学科 伊藤颯真氏
 ※資料1・資料2からも、園内に貴重な環境が残されている証拠が記されている。
 環形動物門貧毛綱:ミミズ類多数 シーボルトミミズなど
 鳥類:夏期、ミミズを捕食するアカショウビンやヤイロチョウが通過する。(渡りの時期)
 冬季、昆虫やミミズを捕食するシロハラ・クロツグミ・ヤマシギなども飛来。※沢には一年中多くの野鳥が訪れる。
 哺乳類:ムササビ・タヌキ

資料1はこちら

資料2はこちら

《降水量と気温について》
  2021年の11月から降水量が異常に少なかったためか気温も上がらなかった。4月末に一日の平均温度が4日間20°以上が続いた時があったため5月5日にヒメボタル飛翔1弾を確認することとなった。しかし、5月も降水量が少なかったため晴れていても気温は上がらず、雨が降っても飽和水蒸気量が低くさらに気温が下がり、ヒメボタルも土や枯葉の下に潜っていた。昨年は雨でも飛翔を確認できたが、明らかに気温が低い。6月中旬の気温が上がった時期に別の場所で確認したが19℃超えの雨でないと飛ばないようだった。


<日照時間との関係>
植物同様、日照時間が大いに関係があることがわかった。日当たりの良いサバンナ展望デッキ前が一番早く5月5日に14匹を確認した。また日照時間が長い場所から発生ピークを迎えた。
<夜霧発生と飛翔ピーク>
本格的な飛翔期を迎える時、昨年同様三宝山では夜霧が発生。気温が上がり飽和水蒸気量が適合したのか、その日からヒメボタルの数が増え始めました。同時にキノコ類が発生。
結果、飛翔ピークは5月23日だった。

<陸生貝類から考える>
ホタルの生息地に2021年度の春から夏は、多くの陸生貝類が繁殖していたが今年度は6月まで降水量が異常に少なく陸生貝類の出現も遅かった。降水量は、2021年度の秋より低調だったため、ゴミムシダマシ系の幼虫も干からびて多数発見された。貝類以外にもミミズの仲間や昆虫などの死骸を捕食するため生き延びたが、乾燥は激しく降水量が少なかったことが前年比でヒメボタル減少の理由の一つになっていることも考えられる。