ワオキツネザル

2025年3月に生まれ人工哺育で育った子ども「ワカバ」は、同年12月頃から父「ウテウテ」と兄「ノボリ」の3頭で同居練習を進め、無事に2026年1月からは展示場で長時間の同居が安定してできるようになりました。これまでこのオトナ2頭との関係性を構築してきたのは、オスの方が比較的性格が穏やかで新規個体を受け入れやすそうだというのが主な理由でしたが、他にも「ワカバ」がオスであり、いずれ群れを大きくするに当たっても、繁殖のコントロールの観点から同性の「ウテウテ」「ノボリ」と過ごす期間が長くなるだろうと考えたのも大きな理由でした。当園は繁殖を抑制する年には、繁殖期に入る秋にメスとオスを分離して群れのコントロールをしています。「ワカバ」がオスである以上、冬に分離する可能性がある母の「シイバ」と同居を急ぐよりは、冬も共に過ごすであろう「ウテウテ」「ノボリ」と早期に関係性を構築してもらおうという狙いがあったのです。


現在関係性が落ち着いてきたウテウテ(右)、ノボリ(左、横向き)、ワカバ(中央、奥)。

しかしこれを読んでいる皆さんはご存じかもしれませんが、この2月、とんでもないことが発覚しました。もうすぐ1歳となる「ワカバ」は順調に成長しているのに、オスの証である睾丸が一向に下降して目立ってくる様子がなかったのです。そこで捕獲し保定した上で獣医と担当飼育係で確認したところ、なんと陰茎も睾丸もなく、メスだということが判明したのです。母親が抱えていたのならまだしも、毎日ミルクを飲ませ排泄の介助をしていたのに気付かなかったのは、穴があったら入りたい、痛恨のミスでした。


ワカバの陰部確認の様子。睾丸も陰茎も見られないことを確認し、正式にメスと判断しました。

とはいえ悪いことばかりでもなく、「ワカバ」がメスなのであれば、母「シイバ」と同居を成功させ関係性が安定した暁には、冬の繁殖期に雌雄を分離する際も、「シイバ」「ワカバ」のメス2頭と「ウテウテ」「ノボリ」のオス2頭の群れに分けることができ、単独で寂しい思いをする個体が居なくなります(「シイバ」は長らく姉「ジュリ」と同居していましたが、2026年1月に「ジュリ」が亡くなって以降単独となっています)。次なる目標は「シイバ」との同居となりました。
性別判定の誤りに気付いてすぐの2月下旬から、「シイバ」と「ワカバ」の同居練習を始めました。「ワカバ」は展示場で「ウテウテ」「ノボリ」と同居をする前に、寝室内で10~30分程度「シイバ」と同居練習をしてから展示場へ出かけるようになりました。最初の格子越しの対面の時から「シイバ」も「ワカバ」の顔を舐めたり匂いを嗅ぐなど良好な接触が見られたので、同居までもスムーズに進みました。「シイバ」が「ワカバ」を放棄してしまった約1年前のことを考えると、いつまた「ワカバ」を拒絶するか分からないと内心ヒヤヒヤしながら見守っていましたが、そんな心配をよそに2頭は戸惑いつつも少しずつ歩み寄って関係を深めていきました。そう時間をかけないうちに、並んで日光浴や摂餌、更には相互にグルーミングをするまで落ち着いて過ごせるようになりました。オス2頭との同居では餌を拾う際に追い払われたり邪険に扱われることもある「ワカバ」ですが、「シイバ」は優しく受け入れ、「ワカバ」も「シイバ」のペースに合わせながら過ごしているようでした。3月初旬には展示場で長時間同居することもできるようになり、晴れて「ワカバ」は1歳を目前に関係するオトナたちとの日中同居を達成することができたのです。


トントン拍子に同居が成功したシイバ(右)とワカバ(左)。

これから夏に向けて、オトナ3頭と「ワカバ」の4頭同居を実現すべく、さらに練習を続けることとなりそうです。現在はオス2頭とも母の「シイバ」とも良好な関係を築いた「ワカバ」ですが、これから成長とともに、ますます関係性は複雑になり、変化することになるでしょう。彼らの生活がより豊かに充実したものになるよう、これからも彼らのペースに合わせながら少しずつ進めていければと思います。