「難題だらけな群れ計画奮闘記‐⑭ミク・ニイナ・サンナの同居のその後‐」
ワオキツネザル
この冬、主な目標は前回までに紹介してきた「ワカバ」「ウテウテ」「ノボリ」の同居展示達成だったのですが、実はその裏である計画が同時進行しています。それはニイナ・サンナとミクの再同居計画です。
これまでニイナ・サンナとミクは同居に失敗し、決裂しています。ニイナとミクはかつて同じ群れで過ごしていましたが、2021年のサンナの誕生とともに関係性が変わってしまったようです。また、子どもだったサンナも成長し立派なオトナメスになりつつあり、他のメスに対する対抗意識が育ってきたようにも思います。これらのことから、2025年4月時点でもニイナ・サンナとミクの同居は難航していました。それでも関係性が途切れないよう、ミクとニイナ・サンナ母娘は互いに姿が見える隣室で過ごしてもらい、攻撃性が緩和することを願いながら様子を見ていました。しかしアタック(壁を激しく蹴り威嚇すること)が頻回に見られるのは時間が経過してもあまり変わらず、頭を悩ませていました。
これまでニイナ・サンナ対ミクという2頭対1頭で全ての見合い・同居練習を行っていましたが、この方法にもそろそろ限界を感じていたので、やり方から見直し再改革することにしました。
現在3頭の中で最も勢いづき、攻撃性が高くなっているのは、年若いサンナのようでした。ニイナもミクのいる部屋へのアタックはしていましたが、サンナに比べて執拗ではなく、またサンナの攻撃行動に半ば影響され引っ張られるような形で、ニイナもミクへ攻撃を繰り返しているようにも見えました。
そこでサンナの勢いを抑えながら徐々に見合いや同居を進めるために、思い切ってニイナとサンナを引き離すという作戦を採用することにしました。サンナは生まれてから一度もニイナと離れて生活したことはありません。いつでも味方についてくれるニイナと常に一緒にいるため、ニイナ以外のオトナのメスに対してもかなり強気で向かっていく傾向があるようです。そこで、まずニイナとサンナを分離し、それぞれミクとの1対1での見合い・同居から始めるという新たなアプローチを試みることにしました。
2025年11月10日、非公開施設で同居練習を繰り返しながら過ごしていたワカバ・ウテウテ・ノボリの3頭と、獣舎にいたミク・ニイナ・サンナを交換移動しました。ワカバたちは母・シイバのいる獣舎で群れ化を目指す一方で、ミク・ニイナ・サンナは他の個体がいない穏やかな環境で互いの関係性を修復、再構築する生活がスタートしました。それぞれ単独生活となってもらい、ミクとニイナは格子越しに互いの姿が見え、サンナとニイナはしばし互いの姿が見えない部屋割りで生活することになりました。
(写真)緊張感はありながら互いにつかず離れず過ごすミクとニイナ。夜は単独で生活しています。
始めはミクと比較的穏やかなニイナで格子越しの同居から始めました。見合いの際は互いに警戒はあるものの、攻撃的な様子は見られなかったため、5分程度の短時間の同居から、少しずつ同居の時間を伸ばしました。途中軽い競り合いはありましたが、大きな怪我がない限りはできる限り毎日同居練習を続けました。2026年3月現在、良好な関係とは言えないまでも、並んで餌を食べたり離れた位置でそれぞれ穏やかに過ごすことができる程度まで関係が安定しました。心配していたサンナとミクとの同居は、意外にもミク・ニイナの同居よりもスムーズに進み、同様に互いに距離を保っていればリラックスして過ごせるようになってきました。現在は午前と午後で個体を入れ替え、毎日この2パターンの組み合わせをルーティンとして過ごしてもらうことができるようになりました。未だに警戒の鳴き声を出したり走って相手から遠ざかるなど緊張感が高まる場面もありますが、一方でどの個体も、単独で過ごしている夜間よりも2頭で過ごす日中の方がよく餌を食べる様でした。単独でいるよりも運動するようになるためだと考えられますが、警戒するような相手でも1頭でいるよりは食べる気になるというのもあるのでしょうか。一見緊張しストレスフルな生活を強いているかに見えた1対1同居スタイルも、やはり本来複数頭で過ごすワオキツネザルには良い刺激となっているのかもしれません。
まだまだ油断はできませんが、3頭の関係性構築に新たな展望が見え始めました。今後どのように進めていくか、まだまだ手探りではありますが、個体がより健全に生活できるよう、これからも考えながら少しずつ進めていきたいと思います。































