ワオキツネザル

「誕生日ラッシュ後半戦」にて、父ウテウテと息子ノボリが闘争したとお伝えしました。なぜそんなことになったのか、その後どうなったのかを今回は書きたいと思います。
2025年1月27日、繁殖に向けたシイバとのペアリングを終了したウテウテは非公開施設へと移動しました。獣舎で単独となっていたノボリも2月11日に同じ非公開施設の隣室へ移動し、繁殖期が終わるまで過ごすこととなりました。再同居に向けて同居の練習を進め、3月からは再び終日同居ができるようになりました。そして4月18日、獣舎のメスたちも繁殖期が終了し2頭の関係性も落ち着いたと判断し、ウテウテとノボリを獣舎の空き部屋へ移動することになりました。


闘争し大けがを負ったウテウテ。たくさん縫いました。怪我は元通りに治りましたが、しばらくは痛々しい見た目でした。ワオキツネザルの闘争の激しさを物語っています。(4月24日撮影)

移動した直後は久しぶりの獣舎に戸惑いながら、変わらず2頭で仲良く身を寄せあっていました。餌も問題なく食べてくれていたため、安心していました。しかし5日後の4月23日の朝、ウテウテが傷だらけでいるのを発見しました。寝室中に抜け落ちた毛が散乱しており、壮絶な闘争があったことは明らかでした。繁殖期が過ぎていたとはいえ、メスのいる獣舎に移り、ストレスが募ったのかもしれません。それまで仲良く過ごしていただけに、予想していなかった事態でした。ウテウテの怪我は全身に及んでおり、緊急で手術となりました。命には別条ありませんでしたが、ウテウテの療養と2頭の関係の再構築のため、他の個体がいない非公開施設へ再び戻すこととなりました。また隣同士の部屋で見合いから再スタートすることになったのです。


ウテウテと対面するワカバ。ウテウテは興味津々で世話をしようとしていますが、ワカバはまだ怖いようでした(6月16日撮影、ワカバ92日齢)。


3頭で安定して同居できるようになってきた頃(8月3日撮影。ワカバ140日齢)。 右下:ワカバ、奥:ノボリ、手前:ウテウテ。

ノボリはウテウテの方を覗き込んだりすることはあっても、格子越しに蹴る、尾を振るなどの威嚇はせず、ウテウテの動きを気にしているような素振りを見せていました。6月頃からは格子越しに背中を互いにくっつけて休む様子も見られるようになりました。この頃、人工哺育で育ったワカバも同じ非公開施設の隣室へ引っ越してきました。より運動能力を高め成長を促すと同時に、オトナのワオキツネザルと接する機会を増やすために、ウテウテ・ノボリのそれぞれと見合いや短時間の同居練習をするようになりました。7月からはウテウテとノボリの2頭での同居練習を再開しました。始めはウテウテがノボリを怖がり鳴いて逃げる様子なども見られましたが、闘争しないよう細心の注意と観察を続けながら、少しずつ同居の時間を伸ばしていきました。そして10月、ウテウテとノボリは夜間を含め終日同居が再びできるようになりました。この頃になると、2頭で体を寄せ合って休む姿や、並んで餌を食べる様子も見られるようになりました。


オス3頭で非公開施設から獣舎に再び移動し、互いに安心してグルーミングしあう11月現在のノボリとウテウテ。奥:ノボリ、手前:ウテウテ。

闘争してから5か月程と長い時間がかかりましたが、ウテウテとノボリは再びオス群編成に向け進み始めました。次はワカバの成長も交え、2025年冬の様子をお話ししたいと思います。