ワオキツネザル

ワオキツネザルたちの日光浴ポーズがよく見られるようになってきました。寒さのため、展示時間を短くする日が続いています。ワオキツネザルはアフリカの南東、マダガスカル島に生息する生き物で、本来厳しい寒さに慣れている動物ではありません。ヒトもこれだけ寒い季節、ワオキツネザルたちはどのように冬を乗り越えているのでしょう。
まず当然ではあるのですが、動物園では基本的に寒さに弱い動物はヒーターや床暖房、エアコンで温めてあげます。ワオキツネザルたちの獣舎も、エアコンとヒーターなどをフル稼働しています。展示場にも温まることができるよう、ヒーターが設置してあります。


展示場のヒーター下で温まるニイナ(左)とサンナ(右)母子。体に尾を巻き付けて熱を逃がさないようにします。

雨の日などは特に、このヒーターの上で休む姿がよく見られます。
そして冒頭でも言った、おなじみの日光浴ポーズで体に熱を取り込むのも冬の大事なルーティンです。四肢を目いっぱい伸ばし、太陽のほうへ体を向け、前身で光を浴びて熱を集めます。紫外線を浴びることも、ワオキツネザルに限らず動物には健康に非常に大事です。ワオキツネザルの美しい毛並みはこの日光浴によって保たれていると言っても過言ではありません。


展示場で日光浴をするニイナ・サンナ。四肢を広げ、腹部を太陽に向けます。

そして冬は多くの動物で体重が落ちやすい季節でもあります。寒くなったり冬の到来を体が感じることで、食べる量が少なくなる動物が多いのです。そのため体重をしっかり計測し、餌の量を調節することも冬を乗り越えるうえで非常に重要です。
しかし、ワオキツネザルたちは他の動物と少し違い、秋冬に餌を食べる量が少なくなっても、体重があまり減りません。明らかに春夏よりも食べる量が減っているのに、体重は横這い、あるいは個体によっては増えることもあります。不思議ですよね。ワオキツネザルたちは、寒くなり食べる量が減ると同時に、活動量も減らし極力エネルギーを使わないように代謝を落とすことで、少ないエネルギーでも一定の体重を維持できるようにしているようです。爬虫類やナマケモノにみられるエネルギー節約術に少し似ています。とはいえ本来ワオキツネザルが生息するマダガスカル島は、日本の冬ほど寒くはならないので、餌を増やし摂取カロリーを調整してあげる必要はあります。
のいちのワオキツネザルたちの場合は、糖質の多いニンジンやリンゴ、タンパク質が摂れる大豆(家畜飼料用のフレーク)などを増やしています。また夏同様、枝葉もたくさん与えます。多くの木は冬に葉を落としてしまいますが、ワオキツネザルが大好きなヤマモモ、シラカシ、スダジイなどの常緑樹は冬でも葉が茂ったままです。実は木の枝葉は繊維はもちろんですが、糖質やタンパク質も豊富に含まれる良質な餌なので、少しでもたくさん食べてもらえるように新鮮なものをあげられるよう、園内のあちこちから集めて来ます。それでも採れる場所、採れる樹種が限られてくる冬は採集に苦労しますが、ワオキツネザルたちが美味しそうに食べてくれるとほっとします。


前が見えないほど枝葉を背負った担当者。常に新鮮な枝を食べられるよう、日々切りに行きます。チンパンジーたちにも時々おすそ分けします。


暖かい部屋で入院生活のコナツも、たくさん枝葉を食べています。


一心不乱にヤマモモの枝葉を摂餌するシイバ。

冬の動物園は、動物もヒトも寒くて縮こまってしまいますが、冬だからこそ見られる行動もあります。両腕を広げて全身で日光浴をし、冬を元気に乗り越えるワオキツネザルたちのことも、ぜひ観察してみてください。