【動物ブログ】飼育日記 レッサーパンダ「屋外タワー大改造!」
レッサーパンダ
レッサーパンダには特に快適な、寒い季節到来です。食べる量は増え、毛並みもすっかりモフモフになりました。夏の間長期休止していた屋外展示場も10月から再開しました。
レッサーパンダたちが屋外展示場に出ていない夏の間に、風雨で傷んだタワーの大規模な改修工事を行いました。今日はその舞台裏をご紹介します。
レッサーパンダたちは樹上で生活をします。高い木の上に登り、眠るときも木の上で過ごします。また、広いなわばりの中をたくさん動き回る野生のレッサーパンダに比べて、飼育されている個体は運動不足になりがちです。そこでレッサーパンダが立体的に動き回ることができるような構造物を設置しています。当園は展示場が屋内と屋外の2か所、寝室が3か所ありますが、どこもレッサーパンダたちが高い位置に登りくつろいだり、自由に運動することができるように構造を工夫しています。
特に屋外展示場は獣舎の中と違い天井がなく、中央には大きなトウカエデの木が生えています。旧タワーはトウカエデを囲むような形で建っており、来園者のすぐ近くまで板を渡ってレッサーパンダが近づいて来たり、タワーや吊り梯子の上で休むレッサーパンダを眺めることができる構造になっていました。
タワーの柱や板はすべて木材のため、数年ごとに新しいものを造り、更新されてきました。今回も旧タワーの特長を活かしながら、よりレッサーパンダたちの行動に変化を付けられるような、そんな構造を目指しデザインを考えました。
業者さんと担当者が現場で打ち合わせを重ね、完成した新タワーがこちらです。
柱の本数が増え、最も高い右奥の柱は3.5mと、旧タワーのものよりも1m以上高く造りました。渡り板の数も殖やし、様々なルートでの移動が可能となるように配置しました。ピカピカの新タワーは旧タワーより複雑でより高さのある構造になりました。レッサーパンダたちの反応はどうだったかというと…
まず最初に屋外展示場へ出る練習をしたのは、「みたらし」でした。待ちわびた屋外展示への移動、勢いよく出ていったみたらしは様変わりしたタワーにも全く警戒することなく登り、あちらこちらにマーキング(なわばりを示す匂い付け行動)をして回っていました。タワーの隅々まで匂いを嗅いで点検し、落ち着いたところを探して休んだり、起きてはまたあちこち歩いたりしていました。活発に動きタワーもこちらの思い描いた通りにフル活用してくれていました。まずはタワーが見掛け倒しではなくちゃんと使ってもらえる機能性があることが確認でき、一安心です。
次に練習をしたのは最年少の「ユズ」でした。「ユズ」も新しいタワーへの警戒はほとんどなく、すぐに登って点検していました。「みたらし」がつけた匂いを嗅ぎまわりマーキングをするにも、かつてのタワーより高さがあり、柱や板も増えているため、かなり時間をかけていました。野生下のレッサーパンダは広いなわばりを持ち単独で生活しています。マーキングの匂いから他の個体の情報を嗅ぎ取りつつ、自分のなわばりを上書きして主張するため、広い範囲を歩き回ります。今回の新タワーの柱や板の増設で、より一層マーキングをして回る範囲やルートが広がった様です。
一方最年長の「カイ」は、他の若い2頭に比べて運動能力がやや衰えて来ているせいもあり、登り降りしやすい位置以外はあまり利用していませんでした。何度かタワーの上を見あげては登らずに引き返していたので、もし「カイ」の気持ちを代弁できるのであれば、「登りたいけど諦めておこう…」といったところでしょうか。そんな「カイ」も、タワーの低い位置にある渡し板の上で寝そべったり、行ける範囲で登り降りし探索したりと、自分なりの新タワーの使い方が見つかったようです。
がらりと印象が変わった屋外展示場の新タワーは、ひとまずはレッサーパンダたちのお気に召した様です。高い位置に置かれたリンゴを時間をかけて探し、身軽に登って食べている様子も見られます。頭のはるか上、タワーの最上部に登るレッサーパンダの堂々たる姿は、とても美しく、かっこよく見えます。
皆さんもしっかり寒さ対策をしながら、タワーで自由に過ごすレッサーパンダたちをじっくり眺めてもらえれば嬉しいです。