ワオキツネザル

前回ニイナ・サンナ母子とミクの同居、そして決裂についてお話ししました。今回は獣舎の残りのメスたち、ジュリとシイバの姉妹編です。
ざっと大きく変化のあった2019~2021年の流れをおさらいすると、図のようになります。


ニイナとジュリの決裂後、再び母子同士4頭での同居練習も行いましたが、互いに険悪な状態から抜け出すことができず、2021年7月以降は子どもの安全を最優先に、いずれも母子のみでそれぞれ生活することになりました。その他の組み合わせ、例えばシイバとジュリ・ノボリ母子や、ミクとシイバなど、様々な組み合わせで見合いや同居を試みましたが、どの組み合わせも距離が縮まらなかったり喧嘩したりとうまくいかないままでした。
ジュリと息子のノボリはしばらく母子平和に過ごしていましたが、次なる問題が浮上します。通常ワオキツネザルのオスの性成熟は2~3歳と言われていますが、ノボリの父親であるウテウテは、1歳半という若さでジュリやニイナと交尾し、子どもを授かりました。それを踏まえると、ノボリも早く性成熟しジュリと交尾してしまう恐れがありました。そこでノボリ誕生の翌年、2022年10月にジュリとノボリの母子も分離となりました。
オスとメスの組み合わせの場合はメスが優位に立ち闘争が起こりにくいため、2022~2023年はシイバとウテウテ、シイバとノボリ、ミクとノボリといった組み合わせで同居をすることもありました。2頭で仲良く過ごす様子も見られ、やはり1頭よりは2頭の方が行動も豊かになるようでした。しかしこの場合も、繁殖期になると個体数のコントロールのため分離せざるを得ないこともあり、長期一緒に過ごしてもらうことは困難でした。


仲良く並ぶシイバとウテウテ。特に相性の良さそうな2頭でした。

やはり群れ化のためにはメスが複数いるグループを形成するのが大事と考え、血縁関係があるジュリ・シイバの姉妹での再同居を目指しました。ジュリも子育てが終わったことで他の個体に対する警戒心が薄れ、トラブルになりにくいのではという期待もありました。
2022年12月に見合いを始め、2頭は大きな闘争もなくどんどん距離を縮めました。シイバの方が順位が上で力が強い様でしたが、それに対してジュリは反発することなく穏やかに接しているように見えました。シイバも、かつては怒りっぽく行動が読めない傾向が強かったのですが、他の個体と離れた時間が長かったこともあるのか、ジュリを激しく攻撃したり追いかけまわしたりするようなことはありませんでした。ニイナ・サンナとミクの3頭同居は残念ながら決裂してしまいましたが、一方で比較的すんなりと同居できるようになった、ジュリ・シイバ姉妹なのでした。この結果を見ると、野生のワオキツネザルがメスの血縁個体で群れを構成するように、飼育下の個体もその傾向が強いのだろうと納得せざるを得ません。次回はウテウテ・ノボリ父子のお話です。


穏やかに展示場で餌を食べるシイバとジュリ。


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