飼育日記

 フタユビナマケモノ「アミーゴ」(オス)が2024年8月17日に推定30歳で死亡しました。長寿でしたが、もっと元気に長生きして欲しいと思っていましたし、皆様も同じ思いだったと感じますので、今回はその療養生活についてお話します。
当園の多くの動物が昼間は展示場で過ごし夜は別の部屋(寝室)にいますが、展示場と寝室を兼ねた空間で一日中過ごす動物もいます。そのうちの1種がフタユビナマケモノです。「アミーゴ」は1996年に来園して以来、ほとんどの期間を展示場で暮らしてきました。その間に子どもが8頭生まれ育ち、メス親や子どもとのいざこざはなく、自然に親子3頭で過ごしてきました。
 2022年の夏頃から、毎日のように排便するようになり(フタユビナマケモノは週1回しか排便しないのが通常です。)、2023年7月には軟便をするようになったため、整腸剤を餌に添加して対処しました。アミーゴが好きなものが食べられるように餌を増量して、時折、餌を食べる時間(夜間)にビデオを撮って食べているかどうか確認をしたところ、摂餌量の低下が見られました。2024年7月8日の朝に、いつもの排泄場所である地面で「アミーゴ」が横たわっていることがあり、万が一落下した時のクッションとなるよう麻袋を敷きました。また、活力の低下も見られ、新たな治療を始めました。慣れた展示場や「キュウ」や「アキ」と離すことは精神的な負担になると考え、展示場で治療を継続しました。水やすりおろしたリンゴを与え、食べそうなものを色々試して口元へ持って行き、近くに吊るす等して、飲水と摂餌(餌を食べること)ができるように促しました。自力でジャガイモを摂餌する日も口に入れないと食べない日もありしました。摂餌のサポートをしているうちに、歯の異常(左下の疑似犬歯が上唇より上に出てきているだけでなく、その上の歯が奥へ曲がっている)に気がつきました。麻酔をかけないと歯の処置はできませんが、体力的に麻酔に耐えられるか慎重に検討しました。「処置をしたら食べられるようになって元気になり、もっと長生きできるかもしれない!」と可能性を信じて、処置を決断しました。処置をした後、一時的に摂餌量が増えましたが、再びあまり食べなくなりました。血液検査では重度の貧血が認められました。ふらついて落下するかもしれないことから展示場へ戻すことを断念し、バックヤードで過ごすことにしました。また、レントゲン検査で膀胱結石が見つかり、歯の異常以外にも原因があることがわかりました。手術も検討しましたが、先に貧血が改善しないと傷口の治癒も難しいことから、とにかく食べてもらうことを目標にしました。貧血や痛みを改善する治療と鉄剤の添加や、引き続き獣医師も飼育係も協力して食べられるもの模索して試しました。しかし、段々と食べることも水を飲むこともできなくなってしまい、回復しませんでした。


左下の疑似犬歯が唇の上に出ていて、8月9日に5mmほど切りました。 (2024年7月12日撮影)


 動物園では、動物が死亡すると解剖をして状況を把握し、動物の飼育環境の改善に努めます。野生動物は身を守るために自分の不調を隠す傾向があるといいます。「アミーゴ」の異常に早期から気がつけなかったことは反省点になりました。頑張って生きたことを実感しました。展示場で看病をしていたので驚かれた方もいらっしゃいますが、応援をありがとうございました。「アミーゴ」の残してくれたものを大切にフタユビナマケモノの保全に役立てること、飼育環境を見直すことで恩返ししたいと思います。


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