レッサーパンダ

 暑い日がだんだん増えてきました。レッサーパンダは本来標高の高い冷涼な気候で生活する動物なので、夏の暑さや日本特有のジメジメムシムシとした気候は非常に苦手です。そこで例年夏季は体調管理のため暑くなる屋外展示場はお休みにし、室内展示場のみの生活となります。現在カイ(♂)、カイ(♀)、みたらし(♀)の3頭がおり、クーラーの効いた寝室と室内展示場で個体が入れ替わりながら1日を過ごしています。室内展示場は涼しく快適な一方、屋外展示場に比べると単調で退屈しやすいというデメリットもあります。そこで5~6月はエンリッチメントの一環として、若い竹の給餌を行っています。


若竹をかじるみたらし

 当園のレッサーパンダたちの普段の餌は竹の葉、リンゴ、ペレットです。食肉類に分類されるレッサーパンダは動物性たんぱく質も食べますが、野生での主食は竹の葉です。当園の個体のこれまでの例を見ても、竹の葉をより多く食べていたほうが健康的に過ごせるようです。おそらく腸内環境のバランスに竹の葉が大きくかかわっているのでしょう。しかし竹の葉であればどれでも良いというわけではなく、季節によって仕入れる竹(当園ではモウソウチクという竹を購入し与えています)をほとんど食べてくれなくなる時期もあります。そういう点では非常に気難しく、健康に飼育するのが難しい動物でもあります。そして仕入れる竹を年間で最も食べなくなるのがちょうどこの時期、暑くなる6~8月頃なのです。そこで活躍するのが、園内で採取できるタケノコや、そこから少し大きくなった若く柔らかい竹です。


園内で採取した若竹やタケノコ

 特にカイ(♂)とみたらしはこの若い竹が好きで、齧って遊んだり、1メートル程に切った竹を一晩でぺろりと食べてしまうこともあるほどです。リンゴなどの餌に比べると若竹は食べるのに時間がかかり、顎の力も手の力も必要になります。また、タケノコは皮ごと与えると、皮をむくのにも時間かかるため、採食時間を延ばすことができ、良いエンリッチメントとなります。


若竹と格闘するカイ(♂)

 7月頃からはこの若竹も採取が難しくなってきますが、厳しい夏はまだまだ続くので、レッサーパンダたちが健康に過ごせるよう、餌や展示の工夫を考えていきたいと思います。