ワオキツネザル

木々があちこちで芽吹き始め、ワオキツネザルたちも展示場のシラカシやトネリコの新芽を食むようになってきました。今回のおはなしは当園のワオキツネザルたちの群れとその歴史についてです。
当園のワオキツネザルを見たことがある方は引っかかるかもしれません。「群れだったっけ?そんなにたくさんいた記憶ないな…」と思った方、正解です。というのも、ここ2年ほど、当園のワオキツネザルたちは展示場で一度に見られる頭数が1~2頭のみだったのです。よく「全然おらんやん」「なんだか寂しそうやね」という声が聞こえてきます。動物園にいる動物の中でも、繁殖期以外は単独で生活する動物もいますので、1頭だけでいる=寂しいとは必ずしも言い切れません。しかしワオキツネザルは大所帯の群れを形成する動物なので、ワオキツネザルに関してはこの来園者の方々の印象は正しいことになります。本来は数頭~30頭ほどの群れで生活するワオキツネザル。日本各地の動物園でも多頭の群れで飼育していることが多く、互いに毛づくろいをしあったり、並んで摂餌をする姿がほほえましい、そんな動物です。本来群れで行動する動物には、群れ独特のルールや個体同士の複雑なコミュニケーションがありますし、単独で飼育する場合と群れの場合とでは、行動や経験も全く異なるものになります。本来のワオキツネザルらしい生活を送らせてあげるためには、複数の個体同士で関わり合いながら生きていく、群れ生活が必須とも言えるでしょう。


2016年の群れ。下段:現在入院中のコナツ 上段:左からニイナ、ミクと今は亡きジョン。


さらに昔の2004年。子どもを含め8頭が一緒に暮らしていました。

ではなぜ当園の個体は寂しそうに1頭でいたり、多くても2、3頭なのでしょうか。それにはこの数年間の当園のワオキツネザルたちの歴史をみていく必要があります。
ながーいお話になるので、少しずつ、回を分けながら紹介していこうと思います。あまり知られていない当園のワオキツネザルたちの秘密と背景を、物語気分で楽しんでもらえたらと思います。次回は現在の状況についての説明から始めていきましょう。


現在単独生活となっているミク。かつては群れにいました。