ワオキツネザル

2020年3月、ネオパークオキナワからウテウテがやってきました。2019年4月生まれ、来園時点ではあどけなさの残る、もうすぐ1歳の若オスでした。それまでの群れを統率していたジュン、最後のオスだったジョンが離脱し、全体の頭数も減少したことを受け、繁殖を目指すために迎えられました。ウテウテは検疫を経て同年4月から獣舎での生活を開始し、メス1頭1頭との相性を探りながらの同居練習が進められました。新体制に期待が高まったのも束の間、ウテウテ参入と時を同じくして、リーダー格であったコナツが入院・離脱してしまい、ついに3頭でまとまっていた群れもジュリとニイナの2頭のみになってしまいます。コナツが入院したのが4月5日、ウテウテが獣舎にやってきたのがその3日後、4月8日でした。


展示場での展示練習中のウテウテ。のちの息子のノボリと顔がそっくりです。

それでも地道な見合い、同居練習のかいあり、ウテウテはジュリ、ニイナの2頭と仲良く日中同居できるようになり、2頭それぞれがウテウテとの子どもを妊娠するに至りました。
ワオキツネザルはマダガスカル原産の動物で、季節性繁殖です。現地では夏に繁殖期が訪れますが、マダガスカルは南半球、日本は北半球のため、日本で繁殖する場合は冬が繁殖期となります。大体10月~1月にかけて交尾、約135日の妊娠期間を経て翌年春に出産するのが一般的です。また、ワオキツネザルのメスの発情は非常に単発的で、交尾を受け入れるのは年に1日程度と言われています。なのでオスはメスの発情を匂い、反応などで見極めて交尾を申し込まなければなりません。さらに、当時ウテウテは性成熟するとされている2歳まで半年以上ある、1歳数か月という年齢でした。これらのことを加味すると、ウテウテは非常に繁殖上手な個体でした。うまくメスたちに溶け込み、交尾まで成功させたのですから、非常に有望で素晴らしいオスと言えます。


展示場で穏やかに過ごすウテウテ(左)、ジュリ(手前)、ニイナ(奥)。

群れに大きく変化があったのは2021年4月20日。ニイナがウテウテとの子どもを2頭出産しました。ジュリもほぼ同時期に妊娠しておりお腹が大きい状態でしたが、ジュリもウテウテも、ニイナが抱いている子どもに対して関心を持っている様子で、引き続き良好な関係が続いていました。しかし5月5日にジュリも出産したことで、群れの様子が一変します。出産以降、ジュリからニイナに対してプレッシャーを与えるような態度が目立つようになったのです。自分にも子どもが生まれ、余裕がなくなったのかもしれません。5月10日、ニイナの子どもが1頭落下し、残念ながら死亡してしまいます。ジュリとニイナの闘争中に振り落とされたと思われました。この時に生き残ったニイナのもう1頭の子どもが後のサンナ、ジュリの子どもがノボリです(末尾の文字を親子で揃えています。覚えやすいですね)。この後しばらくは夜間ジュリ母子・ウテウテ組とニイナ母子組に分かれ、他の個体含めた日中の同居訓練を繰り返していきました。子どもたちは無事にすくすくと成長していきましたが、子どもの存在によって母親同士が敵対を強めることにも繋がっていたようで、その後も各個体同士見合いや同居は困難を極めました。
次回からは個体、グループごとに見合い・同居の変遷をたどって行くことにしましょう。


こども(ノボリ)を抱えるジュリ。ノボリが生まれて少し経ってから、ニイナとの折り合いが悪くなり、分離を余儀なくされました。


2頭のこども(サンナ・レイナ)を抱えるニイナ。レイナはこの後すぐに亡くなりました。ジュリとニイナの闘争により、振り落とされたものと考えられました。


ウテウテ(左)、ニイナ(右)。ニイナはこどもを2頭抱えていますが、この時まではジュリとも平和に過ごしていました。


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