動物病院だより

高病原性鳥インフルエンザウイルス感染症の対策で、野生鳥獣の保護の受け入れを長らく中止していましたが、6月より再開しました。


スズメの巣立ち雛:見た目はスズメだがやや小さくてフワフワした羽が多く、嘴の端がまだ柔らかい

再開してすぐ、立て続けにツバメとスズメの保護が来ました。いずれも巣立ち後のまだうまく飛べない幼鳥で、ケガや衰弱はなかったため、「巣立ち雛で親が近くにいると思われるので元居た場所に放して欲しい」とお伝えしましたが、「野良猫がいる」「近くに親はいない」「車が多い」などの理由から保護された方に放していただくことは叶わず、数日ではありましたが動物園で保護した後、放鳥しました。


適度な日光浴も大事

巣立ち直後の鳥の雛はツバメもスズメも、カラスもハトもフクロウも、他のどんな鳥でもまだ飛翔能力や採食能力が低く、巣立って数日の間、草むらや低木、なにかの物陰などに隠れながら親に餌を貰いつつ、飛ぶ練習やこれか生きていくために必要な事を学んでいきます。その大事な時期に、親ではなく人間に世話をされてしまうと、リスクを回避する力や自分で餌を捕まえることがうまくできない鳥になる可能性もあります。さらにツバメのように家族や仲間と密に関わって生活している鳥はその後の渡りなどにも影響が出るかもしれません。


ツバメの巣立ち雛:尾の形が扇型で(燕尾状ではなく)白い斑があり、大人のツバメよりはやや小さい

野生動物は雛や幼獣の時に他の動物に狙われて命を落とすことも多いですが、それによって生態系の中でさまざまな命が繋がっています。捕食する側も生きるため、子を育てるために必死ですし、捕食される側も様々な知恵を身に付けて子孫を残し、必死に生きています。人間が関わる何らかのリスクがある場合を除いては、安易に野生動物の生活に手を出すことは避けたいものです。


保護後しばらくしたら止まり木にのぼり、鳴いて親を呼んでました

人間の生活圏に巣をつくるツバメやスズメのような鳥は、巣立ち後、人目につく場所でじっとしていることもあるので、見つけて心配で保護してしまう気持ちもわかりますが、もし見かけたら、まずはケガがないかだけちょっとみて、大丈夫そうならそのままそっとしておくか、路上などであれば近くの植え込みや木の上など隠れられそうな場所にそっとおいて、離れて欲しいです。しばらくすると親鳥を呼び始め、親鳥も人間の気配がなくなれば近づいてきて、時々餌を与えて、一緒に少しずつ移動すると思われます。


スズメも保護直後、大きな声で親を呼び始めました

発見した鳥が巣立ち雛なのか、ケガがあるのかもわからずどうしたらいいか判断できない場合は、その場から動かしてしまう前にとりあえず一度、動物園に相談してみてください。この2羽のほかにも1か月の間に3~4件相談を受け、詳しくお話を聞いたうえで巣立ち雛と判断し、見つけた方にお願いしてそのまま元居た場所や近くの少し安全が確保できる場所に放していただきました。
ガラスなどに衝突した、脚や羽にケガをしている、自宅の猫がどこかから咥えてきた、など様々な状況で保護の対象になる場合もありますが、やはりケガのない巣立ち雛であれば親と過ごすことが一番良い選択なりますで、できるだけ陰ながら見守って欲しいです。


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