ワオキツネザル

ニイナとジュリの出産と決裂から約半年、2021年10月までにはミクとニイナ・サンナ母子の組み合わせでの同居練習を進めました。格子越しに見合いすることから始め、喧嘩しないよう人が張り付いて観察する段階から、本当に少しずつ、細かく段階を踏みながら、日中長時間同居できるよう慣らしていきました。12月のクリスマスケーキのプレゼントイベントでも、3頭で仲良くケーキを食べることができるぐらい、その関係は揺らぎないものに見えました。


格子越しに見合い中。左:ニイナ、中央:サンナ、格子奥:ミク。この時はまだ緊張感がありました。

今度こそ3頭で夜間を含めた同居に踏み切れそう!と希望を抱いたのも束の間、年の瀬迫る12月下旬、突然の闘争でこの組み合わせもまた一からやり直しになってしまいます。ワオキツネザルの闘争はひとたび始まると激しく、特にメスの場合はどちらかが怪我をするまでやり合ってしまうこともよくあります。この時もミクが手に怪我をしてしまい、せっかく進んでいた同居も解消せざるを得ないほど、関係は一気に険悪になってしまいました。同居中はミクがリーダー気質のため、ミクが統制するような形で3頭の関係が成り立っていたかに見えましたが、ニイナはそれが実は面白くなかったのかもしれません。また、3頭の同居中にウテウテを隣の部屋に収容したことも、闘争の種になったかもしれないと解釈しています。ワオキツネザルは秋ごろから春先までが繁殖期になります。この時期は特にメスの縄張り意識が強くなったり、好戦的になる傾向があるため、オスのウテウテを隣室に入れたことによってその闘争意識をかきたててしまった可能性が考えられました。
これらの要因についてはすべて推測の域を出ません。しかし、どんなにうまくいっているように見えても、突然ちょっとしたきっかけで関係性が瓦解することがあるということを学んだ、担当者にとっては非常に苦い出来事となりました。
それ以降、ミクとニイナ・サンナ母子は隣室で過ごすものの、ニイナ・サンナ母子がミクに対して威嚇をするなど強く当たるようになってしまいました。かつては他の個体も交えて同じ群れで暮らしていたミクとニイナも、他の個体の離脱や新たなオスの登場、出産など様々な変化を経たことで、関係性も大きく変わりました。それでも一時は平穏に過ごしていたので、また再同居を目指しながらベストな解決方法を探っていきたいと思います。次回はこちらも紆余曲折、ジュリ・シイバのお話です。




展示場で穏やかに過ごす3頭。この後闘争してしまうとは思いもしませんでした…。


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