ワオキツネザル

これまでメス5頭を中心に話を進めてきましたが、一方オスたちはどうしていたかについて今回はお話します。
メスが中心になり群れをつくるワオキツネザルは、オスの立場が非常に弱いです。オスがメスに逆らうことは滅多にありません。私もオスがメスに対し怒ったり抵抗しているところは見たことがありません。そのぐらいオスはメスに従順なので、メスとオスの同居は平和的に完了できる場合がほとんどでした。そのため、メス同士の見合い・同居がうまくいかず膠着状態になったり、単独のメス個体が増えた時期にはウテウテに緩衝材役として、メスと同居してもらっていました。主に長期間単独生活が続いていたミクやシイバと同居してもらい、メスたちの不安を和らげてくれました。メスから時に強く当たられることもありましたが、ウテウテはうまくかわしながら機嫌をとっており、きっと個体数の多い群れでもこうしてオスがうまくバランスを取っているのだろうという印象を受けました。メスたちの同居が難航し悩んでいた私たち飼育員も、和やかに過ごす彼らを見てほっこりとした気分になりました。
しかし一方で、オスとメスを1年を通して同居することはできません。通常ワオキツネザルは冬、特に11月~1月にかけて交尾をして子どもを産みます。メス同士の同居がうまくいっいない状態で子どもができた場合、その後の同居練習がさらに難航する恐れがありました。また、オスとメスをペアリングする場合は血統も気にしながら慎重に行う必要もあり、当時メスたちも単独飼育の個体が多い状況では繁殖を視野に入れている場合ではありませんでした。
また、2022年の夏の時点まで、ノボリは母親のジュリと同居していましたが、そのまま繁殖期を迎えると母子間での繁殖の恐れがありました。ノボリの成長に伴い母子を分離する必要が出てきたのです。


ノボリと分離後、1頭で過ごしていたジュリ。

そこで同年の繁殖期前、10月頃からはオス2頭の同居を目指し、見合い・同居練習を始めました。互いに長らく同居しておらず、ノボリが大きくなってからは初の同居だったので、メス同士の場合と同様、慎重に進めました。


同居練習中のウテウテとノボリ。相手の匂いを確認しているところですが、緊張感が漂います。

当時ノボリはジュリと獣舎で、ウテウテはシイバと非公開の別施設でそれぞれ同居をしていたため、オス同士の同居に向けてそれぞれの雌雄を分離し、移動する必要がありました。
そこでシイバとノボリを交換移動させ、ノボリとウテウテは非公開施設で同居練習をすることにしました。始めノボリは母のジュリと離れたことにより不安そうな様子でした。見合い・同居も互いにかなり警戒しており、威嚇しあったり、体が一回り大きいウテウテがノボリを追いかけたりとはじめからすんなりと進んだわけではありませんでした。時には喧嘩をして傷を作ったこともありました。それでも少しずつ一緒にいることができる時間が伸び、12月には夜も含めて終日同居できるようになりました。立派な成熟したオス同士、安定してからも日常的に相手をけん制したり小競り合いをする場面が見られることもありましたが、ひとまずオス同士の同居は完了となったのです。


並んで休むオス2頭。餌を食べるときなどは成熟したオスらしい小競り合いがありましたが、休むときは体をくっつけていました。

繁殖期以外は変わらずメスとの見合い・同居を続けながら、次なる目標は3頭以上での同居となりました。次回は念願の4頭同居の成功についてお話ししようとます。


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