動物ブログ 飼育日記 レッサーパンダ「レッサーパンダデー大討論!みんなのコメントを考察してみた その1」
レッサーパンダ
毎年9月の第3土曜日は国際レッサーパンダデーです。
国際レッサーパンダデーはレッサーパンダ保護団体である「Red Panda Network」が定めた、レッサーパンダのことを皆さんによく知ってもらうために定めた日です。当園も毎年イベントを行っています。
去年は質問を募集しましたが(飼育日記「みんなのギモンに答えてみた!」参照)、今年は「レッサーパンダデー大討論!」と題して、2つのテーマに沿って皆さんからのコメントを募集しました。2つのテーマを合わせて全部で 計196通のコメントが寄せられました。一生懸命考えてくださった皆さん、本当にありがとうございました。
私なりの見解を添えながら、皆さんからもらったコメントについていくつか紹介していきます。今回紹介するテーマ①は、「レッサーパンダは皆さんのおうちでは飼うことができません。
何故だと思いますか?」というもの。レッサーパンダの展示場前で来園者がよく言うセリフ第1位は「かわいい」ですが、その次に多いのが「飼いたい」「飼えそう」というものです。では実際に飼えるのかというと答えはノーなのですが、それは果たして何故なのか、皆さんに考えてもらいました。
”あつさがにがてだから”
→その通り、レッサーパンダは暑さが大の苦手です。レッサーパンダの生息地は中国南西部からブータン、ミャンマーなどにかけてですが、特にヒマラヤ山脈周辺の標高が高い地域に暮らしています。冬は雪が降るような気候の中を生き抜くため、寒さには非常に強く、体中は密な毛でおおわれています。のいち動物公園では夏の間屋外展示場はお休みにし、涼しい屋内のみで過ごしてもらっています。エアコンをガンガンに効かせており、肌寒いほどの温度です。みなさんのおうちでレッサーパンダを健康に飼おうとしたら、とんでもない電気料金がかかることは間違いないでしょう…。
”くさいから”“トイレがないから”
→おしっこ、うんち、様々なものが臭いのではというコメントを頂きました。あるいはトイレが用意できないからというコメントもありました。
レッサーパンダは竹を主食としているため、実はうんちはあまり臭くありません。茶葉のような匂いがします。しかし竹をたくさん食べるため、ずっしりと密度の高いうんちを大量にします。また、レッサーパンダはなわばりを主張するための匂いつけ行動をするため、おしっこをあちこちにこすりつけます。特に繁殖期の冬になると、独特のケモノ臭が強くなります。うんち自体は決して臭くはありませんが、ヒトを含む他の多くの動物と同じように、無臭という訳にはいきません。
もともとしつけができるイヌや、ケージで飼える小動物とは違い。れっきとした野生動物なので、トイレをこちらの都合の良い場所、少ない量にとどめてもらうのは無理そうですね。
”ある動物園のレッサー担当の飼育員さんのうでを見たらめっちゃ傷だらけ!!でした。ツメが鋭い!ですね”
→そうだったんですね、それは大変。確かにレッサーパンダは高いところに登りやすいように、鋭いカギ爪があります。垂直の丸太も楽々と登ってしまう程なので、意外に腕力もあります。鋭い犬歯も生えているため、噛まれたり引っかかれたりしたら大けがになります。ただ、よほど追い詰められたり嫌なことをされなければ、レッサーパンダが進んで人を攻撃することはありません。とはいえそこは逞しい野生動物であるレッサーパンダたち。彼らにその気がなくても、うっかり腕を掴まれたり軽くかまれただけでも人は傷だらけになってしまいます。イヌやネコのように適度な距離を保って付き合うのが難しいのが、野生動物なのです。おうちで飼うのはやはり適切とは言えないでしょう。
皆さんよく観察してくれていますね。一方、びっくり仰天なコメントもいろいろありました。その中でもとくに驚いたのが、こちら。
”毒があるから”
もしそうだったらみかけに寄らずかなり怖いですが…結論から言うと、レッサーパンダは毒を持っていません。毒を持っていたら流石に私たち飼育員も同じ空間に入れません。「おうちで飼えない」=「危険なのでは?」と考えたのかもしれませんね。この「レッサーパンダ毒持ち説」を唱えたコメントは3通ありました。安心してください、レッサーパンダは毒牙もなければ排泄物に毒が含まれているわけでもありません。
他にも多数のコメントを頂きました。SNSの他に、展示場にも担当飼育員のコメントとともに随時掲示していきたいと思います。
レッサーパンダは保護されるべき野生動物であり、個人が飼育したり商業的に取引することは厳しく禁じられています。それ以外にもおうちで容易に飼えない理由はたくさんあるということ、皆さんに真剣に考えていただけただけで、今回のコメント募集はとても有意義だったのではないでしょうか。皆さまご参加ありがとうございました!次回はテーマ②のコメントを紹介します。お楽しみに!