【動物ブログ】飼育日記 ワオキツネザル「難題だらけな群れ計画奮闘記‐⑩こちらもドタバタ!ニイナ・サンナ‐」
ワオキツネザル
前回お話しした通り、ウテウテたち4頭が繁殖に向けて忙しくしている間に、ニイナ・サンナ母娘にとってもいろいろなことがありました。
4頭が1ペアと単独個体2頭の計3グループに分かれるにあたって、獣舎の部屋割が大きく変更になりました。その結果、いずれか1グループ(あるいは1頭)が獣舎から離れた非公開施設に移動する必要が出てきました。熟考に熟考を重ねた結果、ニイナ・サンナ母娘を非公開施設に移動するのが最も良さそうだと判断しました。動物を新たな環境に移動させる際は、動物にできる限りストレスを与えないようにすることが大切です。子どもを産んで育てる可能性があるシイバは、慣れ親しんだ獣舎にとどまってもらいたいという思いがありました。また、単独の個体は他の個体の姿が見えなくなるとストレスを抱えやすくなり、体調を崩す可能性も高くなるため、ジュリ、ミク、ノボリも獣舎で引き続き過ごしてもらいたいと考えました。これらのことを考えた結果、非公開施設へはニイナ・サンナに移動してもらうことに決まりました。ずっと一緒に過ごしてきた2頭一緒であれば、初めての場所に慣れるのも時間はかからないだろうと考えたのです。しかし結果から言えばこの予想は大きく外れ、様々な困難が待ち受けていました。
10月某日、非公開施設へ移動してきた2頭でしたが、その日から食べる量が激減してしまいました。移動用のケージに入ることも初めて、別の施設へ移動するのも初めてと、慣れないことが一気に押し寄せたせいか、すっかり意気消沈してしまったようでした。このまま餌を食べないと瘦せてしまうため、煮たイモやバナナ、枝葉などの嗜好性の高い餌を増やしながら、様子を見ることにしました。
はじめは大好物も残してしまうぐらい食欲が落ちていたようでしたが、数日経つにつれて少しずつ周囲の環境に慣れたのか、食べる量が増えていきました。体重測定の頻度も週1回だったところを3日に1回程度に増やし、体調を気遣う日々が続きました。隣室にいる他の動物(鳥インフルエンザ対策で展示場から引っ越してきた水鳥や、繁殖のために移動してきたプレーリードッグなど)の動きや音にも、はじめは過剰に反応し、部屋中を飛び回ったりするなどパニック状態になっていましたが、時間とともにそれにも慣れた様子でした。やっと環境に慣れてくれたとホッとしていたのも束の間、12月初旬には室内に血痕を発見しました。母娘で闘争したのかと慌てて原因を探ったところ、Nの尾から断続的に出血していることが分かりました。もともとNの尾には小さな瘤(長年あるもので、原因は不明です)があるのですが、自分で気にして齧ってしまったのか、瘤に小さな穴が開いていたのです。少なからずストレスが影響していたのかもしれません。
投薬治療をしながら、与える枝葉の種類を増やしてみたり、より一層寒さをしのげるように工夫してみたりと色々試しました。そうこうするうちに傷も塞がり、2月現在は穏やかに過ごせるようになりました。
獣舎から移動して3か月、ようやく平穏を取り戻した2頭。このまま穏やかに過ごしてもらいたいところですが、獣舎の個体も再び組み合わせ変更や部屋移動をしていく予定なので、それに応じてニイナ・サンナも再び移動することになりそうです。
できる限りストレスを減らせるよう、これからも気遣い頭を捻る必要がありそうです。