ワオキツネザル

ワオキツネザルは木の葉を主に食べる生き物です。当園でもいろいろな植物を与えています。
展示場にはシラカシやアメリカデイゴ、シマトネリコなどの食べられる植物が植えられています。また、下草もクローバーやタンポポ、ヘクソカズラなどの食べられるものが多くあります。特にワオキツネザルたちが活発になる春~夏は、展示場でこれらの植物を食べる姿を頻繁に見ることができます。通常メニューに入っている葉野菜よりも、これらの植物の方を好んで食べるぐらい、大好きなのです。
また獣舎の中にはいくつかの部屋があり、展示場には交代で出ています。展示場に出ていない個体が少しでも退屈しないよう、獣舎の中にいるときも枝葉を与えるようにしています。ヤマモモやサクラ、イヌビワ、シラカシ、アラカシ、スダジイ、モミジなど、他にも多くの種類の枝葉を園内から切ってきています。


おいしそうにコナラを食べる「ノボリ」(オス)

こう聞くと何でも食べそうに思えます(私も始めはそう思い、舐めてかかっていました…)が、ワオキツネザルたちは同じ種類の植物でも、季節や部位によって食べたり食べなかったりします。例えばドングリの一種であるシラカシ。春に出てくる若い新芽は非常に好きでよく食べますが、冬の硬い葉はあまり食べません。また、同じくドングリの一種であるスダジイの場合、若い葉よりも硬くて色の濃い葉が好きなようです。さらに、枝は園内のあちこちから採取してきますが、同じ種類でも木の生えている場所(あるいは環境?)によって好き嫌いが分かれるようにも思います。ヒトからすると見た目が同じような葉っぱでも、いつもと違う場所から採ってきたものだと見向きもされない、あるいはいつもより食べてくれた、なんてことがよくあります。匂いなのか味なのか、はたまた成分なのか…。他の動物園のワオキツネザル担当者の話を聞くと、当園の個体と嗜好性(好みの傾向のこと)が全く異なる、なんてこともあり互いに首をひねったりしてます。ワオキツネザルたちと会話ができるのであれば、最初に枝の好みの基準を聞きたいと私は常々思っています。


展示場でメヒシバ(イネ科植物の一種)を食べる「ニイナ」(右)と「サンナ」(左)母娘。


お気に入りのサクラの実を勢いよく食べる「ウテウテ」(オス、右)と、全く食べずにぼーっとしている「シイバ」(メス、左)

とはいえ広い園内、生育している植物種も豊富です。それぞれの好みや旬に合わせて、あれこれ選びながら枝を切るのは、大変ですが楽しい作業です。食べてくれない時ももちろんありますが、美味しそうに食べてくれると担当冥利に尽きます。また、夏は多くの植物が活発に成長する季節。花、実、若葉、穂などワオキツネザルたちにとってのごちそうがあちこちに現れます。御年33歳、「病院だより」でもおなじみの「コナツ」も、入院室で隠居生活を送る日々の中で、旬の恵みを楽しんでくれているようです。


アメリカデイゴの真っ赤な花をおいしそうに食べる「コナツ」

皆さんも是非、展示場のワオキツネザルが茂みや木の上でゴソゴソしているのを見かけたら、何を食べているのか観察してみてもらいたいと思います。


ムクゲの花を食べる「ウテウテ」。バナナなどの果物よりも先に食べるぐらい大好物。