レッサーパンダ

前回に引き続きレッサーパンダデーで寄せられたコメントについて、紹介していきます。今回はテーマ②「あなたにとってレッサーパンダはどのような動物ですか?「かわいい」という言葉を使わずに表現してください」について。レッサーパンダを見た大半の来園者が「かわいい」と口にする、魅力的なレッサーパンダ。では「かわいい」という言葉を使わずに表現すると、皆さんどこに注目するのでしょうか。

”思ったより大きかったです”
→レッサーパンダの体長は約70~90㎝ほど、体重は5.5~7㎏ほどです。長くてふさふさした尾や、丸っこい体型を見ると、想像よりも大きく感じるかもしれません。とはいえ実はレッサーパンダの体の見えている体積のほとんどは長い毛であり、中身は意外と細身で筋肉質です。実際毛を触ってみると、毛の深くまで手が沈み込むのが分かるほどです。しっかりと測ることは難しいですが、おそらく毛足は3cmほどあるのではないでしょうか。太く見える尾も、骨と皮膚の軸があるのみで、あとは全て毛です。また、夏と冬では毛のボリュームが変わるので、まるで別人のように見た目が違います。夏はすっきり細く、冬はまるっこくふわふわな体になります。


夏毛のユズ。顔も体もほっそりして見えます。


冬毛のユズ。全体的に毛のボリュームが増えます。


”ふわふわしていてぬいぐるみみたい”
→「ふわふわ」「もふもふ」「もさもさ」などの毛並みに関する表現や、「ぬいぐるみ」「お人形」みたいというコメントが最も多く寄せられました。その通り、レッサーパンダ最大の特徴といえば触りたくなる毛でしょう。色も赤茶色で美しく、どんな触り心地か気になりますよね。細く柔らかそうに見えますが、手触りでもっとも近いのは柴犬だと思います。これは複数の飼育員が証言しています。あの赤茶色の毛は以外にしっかりとした硬さもあるのです。また、皮膚の近くには赤茶色の毛とは別に、灰色をした綿のような細くて細かい毛が密に生えています。これは地肌を冷たい空気から守るための毛で、外側の赤茶色の毛と2重構造を取ることで寒さ対策をしているのです。あとは大きな顔と短い足も、マスコットのような印象を与える理由かもしれません。レッサーパンダは竹を食べるため、顎がかなり大きくなっており、頭部から顎へ伸びている噛むための筋肉も大きく発達しています。そのため顔を正面から見るとネコやイヌとは違い丸みを帯びています。また、木に登ることに特化した体つきのため、胴長で足も短く太くなっています。そのため地面を速く走ることが苦手という一面もあります。どこかコミカルで現実にいる動物というよりはぬいぐるみのように見える理由も、分解してみるとちゃんとした生態学です。ひとつひとつの形に理由があるんですね。


レッサーパンダの骨格標本(レプリカ)。下あごが大きく幅広いので顔全体が丸く見えます。

”タヌキみたい”
→他にもリス、ネコ、サルみたいなど、いろいろな似ていると思う動物が挙がっていました。その中でも最も多かったのがタヌキです。確かに目の周りに模様があることや、全体的なサイズ感が似ているという印象を与えるのかもしれません。ただ、実際に比べてみるとかなり違いがあります。レッサーパンダは目の上下に白い模様、タヌキは目から顎にかけて涙のように黒い帯模様があります。全体の毛の色も違いますし、一番分かりやすい違いは尾のしま模様の有無でしょう。レッサーパンダはしまがありますが、タヌキはありません。また、コメントにはありませんでしたが、展示場前でよく聞くのは、「ラスカルや!」というセリフ。ラスカルはアライグマですが、確かにアライグマはレッサーパンダによく似ています。顔に模様があり尾はしま模様ですし、木登りも得意です。実際のアライグマは灰色の毛並みですが、アニメのアライグマ・ラスカルはオレンジがかった茶色で描かれており、レッサーパンダによく似ているのでなおさら間違えられるのでしょう。顔を見てみると、アライグマは目の周りに黒いアイマスクのような模様があり、左右の黒い模様はつながっています。これらの見分けがマスターできたら、かなりの上級者でしょう。
いろいろな他の動物と比べて共通点や相違点を見出すというのも、動物を観察するうえで重要な楽しみ方です。是非レッサーパンダだけでなく他の動物でも行動や体の形などを見比べてみてくださいね。


顔の模様や体の色で見分けてみて下さい!

さて、いかがだったでしょうか。2回に渡り皆さんからのコメントを紹介しましたが、同じお題にしても様々な見方・考え方があるということがよくわかりますね。今回はレッサーパンダをただ見るだけでなく、より深く皆さんなりに解釈・観察していただきたいと思い企画しました。レッサーパンダをはじめとして、野生動物への興味や理解をより深めてもらえれば、とても嬉しいです。
コメントを書いてくださった皆さん、本当にありがとうございました!


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