動物病院だより

幼少期、下痢が続いて大変だったムササビですが、立派に成長し、昼はほとんど巣箱から出てこず、暗くなると動き出して好物のヤマモモの葉をしっかり食べるようになりました。
体重も700gを超えて大きくなり、とうとう山へ放す時期が来ました。ずっと近くで治療してきたので、なんだか切ない気持ちになりましたが、広い山で好きなものをたくさん食べて、いつか仲間と出会って命を繋いでいくことがやはり一番自然なことなので、それを願いながら放しました。



  突然の慣れない環境に戸惑い気味の様子

野生動物は、人間のように色々守られて生きていける訳ではなく、すべて自分の力だけで生きているので、天敵や悪天候、人との関わりなど(交通事故ほか)色々な危険も伴います。
動物園に保護されてくる動物たちの多くが、交通事故や巣のある木が伐採されるなどの理由でやってきます。このムササビも巣の破壊が理由でした。
厳しい野生を生き抜いていくために動物の親たちは出来る限り生きていく術を子に伝えて自立させます。本能の部分と学習する部分とがあり、途中から人間に育てられると、自力で生きていくための大事な術を学べないこともあり、野生で生きていくのは正直とても大変だろうと思います。
なので、保護依頼の連絡がきたときには、個体にケガや衰弱がなく、親に戻せる状況ならまずはそうしてもらうようにアドバイスします。
命を繋ぐことは、その個体が生きて子孫を残すことはもちろんですが、他の動物に捕食されて何かの命に繋がることでも成り立っていると思います。もちろん、捕食されなくても死んで土に還る(正確には小さな生き物たちによって分解されていく)こともちゃんと命を繋いでいると思います。そうやってずっと動物たちはいままで命を繋いできているのだと、毎日なんらかの生き物を見るたびにすごいなあと感動します。その命の繋がりをあっという間に壊すのが人間の活動であってはならないとも思います。


  外に馴らす前の頃の様子

放して2週間ほど経ちますが、このムササビもなんとか無事に過ごしていてくれることを祈るしかできず、毎日山を眺めてはどうしてるかなぁ、大丈夫かなぁと呟いています。頑張れ、ムササビと心配性の私。


  放す前にそっとなでなでしました


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