動物病院だより

まっくろヒヨコのころから2羽で頑張って育ってきたヒクイナ達。少し前に広いスペースにお引っ越しして、走る練習と飛ぶ練習を重ねてきました。
最近では、全身の色は濃いグレーに、首回りはやや赤みがかった色が出て、おなか側の羽は白地に黒い斑点があり、脚も桃色に近くなり、ちょっとずつ大人のヒクイナに近づいてきました。



本格的に寒い冬が来てしまう前に、今ならまだ多少餌になる虫もいるので、思い切って放鳥することにしました。
ヒクイナは、葦原のある緩やかな河川やその水辺近くの田んぼ等に生息していることが多いので、条件に合ういくつかの候補地を下見して、どこにしようか吟味した結果、一番過ごしやすそうな動物園に近い川辺に放すことにしました。短時間の観察で、サギやオオバンやカルガモ、ヒクイナにとってはちょっと怖いけど小さなタカの仲間も見かけ、その川に様々な生き物が集まっている印象がありました。




11月16日の午前中、ヒクイナ達を捕まえて、2羽を小さな箱に入れ、河原へ連れていき、蓋をそっと開けました。私の予想では、葦原の中へ走って逃げていくのではと思っていましたが、予想通りにはいかず、2羽とも上空へ上手に飛んで行ってしまい、道路に近い場所に着地し、かなり焦りました。車の来ない方へ行ってもらうため道路側からそっと近づくと、1羽は川の中にある木に向かって飛んでいきました。もう1羽はどこへ行ったのかわからず、心配で30分程少し離れて観察していました。すると急に護岸に現れ、トコトコと下ってきて川に向かってピョンと飛び降りて見えなくなりました。とりあえず、姿を確認できたので安心しました。


のいち動物公園でのヒクイナの保護は、10年前にのいち動物公園で私が働き始めてからは初めてのことでした。そもそもあまり頻繁に遭遇する鳥ではないようで、国内でも地域によっては絶滅危惧種にもなっているようです。高知県ではまだそこまでの指定はないようですが、生息地である田畑の減少や川の護岸工事に伴う環境変化によって今後生息数が減ってくる可能性もあります。できるだけ野生動物たちが普通の生活を営んでいけるように、環境を守っていくことが人間にできる最良なことだと思います。自然環境は一度壊れてしまうと同じものを作りだすことはきっと出来ないので、様々な生物が生きている豊かな環境が残っていることが高知の魅力だし宝なのだと思います。


今日もどうしているか記事を書きながらもやっぱり心配ですが、2羽ともたくましく生き抜いてくれることを願っています。


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