【動物ブログ】病院だより「保護動物通信vol.4 タヌポンのお話」
動物病院だより
6年前の初夏に赤ちゃんで保護されたタヌキのタヌポンは、現在も元気に過ごしています。タヌポンは生まれつき目が見えていないため、野に放すことができませんでした。タヌポンはとても大人しい性格で、昼間はほとんど寝ていて、マイペースに生活しています。おそらく夜は獣舎内を歩き回っていると思われますが、朝見に行くともう丸くなって寝てしまっています。餌はドッグフードを食べています。
毎年、夏にはたくさん毛が抜けるため、頻繁にブラッシングをしていますが、夏は体が一回り小さくなったように見えます。
今は、また冬に向けていつの間にかモコモコになっていて、食欲も高く体もずっしり重たいです。
タヌポンの世話をして初めてタヌキの鳴き声を聞き、複雑な模様の毛色や、シバイヌよりちょっと小さいくらいの体の大きさなど知ることが出来ました。高知ではタヌキは身近な野生動物ではありますが、野生のタヌキは警戒心が強く、基本的に夜行性なので、みなさんもあまりじっくり見る機会はないのではと思います。タヌポンは大人しいとはいえやはりタヌキですので、ブラッシングや爪切りなど近くで接するときはタヌポンの感情を読みつつ緊張感をもってやっています。(眼も見えていないのでいつも声をかけて近づいています)
現在、野生下で疥癬症という病気に感染しているタヌキが増加しているように思います。疥癬ダニという寄生虫の病気ですが、全身の皮膚が侵されてボロボロに壊れてしまい、外見上タヌキとわからないような姿になってしまいます。早期に適切な治療を行えば治る病気ではありますが、進行していたり、免疫機能が低下している場合は治療しても難しいこともあります。激しい痒みと痛みがあり、最終的には餌も食べられなくなり衰弱して死んでしまいます。
もともとは犬や猫の疥癬ダニが野良猫などを介してタヌキに感染し、その後タヌキの間で接触感染により広まっていると思われます。野生動物で広がるこのような重篤な病気の撲滅は、国や県レベルで対策を考えていかなければ正直難しいです。日本固有の動物であるタヌキが、いつか希少種になってしまわないように、そしてこのような病気や交通事故など、人間の生活に巻き込まれて命を落とすようなことが増えていかないように、少しでも自分にできることはないか、色々考えていかないといけないなと思います。
タヌポンもタヌポンの仲間たちも幸せに暮らしてほしいです。